サイディングやALCと言った外壁には必ず、コーキングが使われています。
外壁を塗装する際に悩んでしまうのが、コーキングは塗装すべきなのか、塗装しない方が良いのか、という問題です。
塗装店によっては、「コーキングは打ち替えます」と言ったり、「そのままでも大丈夫ですよ」とそれぞれ意見が食い違っていてどうしたら良いかわからない!と悩む方も多いのでは無いでしょうか。
もし、間違った方を選んでしまうと、最悪の場合雨漏りや漏水してしまい、大変なことになりかねません。
そこで今回は、外壁塗装で必ずと言っていいほど登場する「コーキング」について解説します。
コーキングの基本から知りたい方はぜひ読み込んでみて下さい。
コーキングとは
コーキングは液状のペーストのような状態からゴムのような状態になる材料です。もともとはペースト状なので、形が複雑な箇所に使うこともできます。また、家で使われる場所は、お風呂や洗面所とった水回り、サッシ回り、サイディングの隙間や割れを塞いだり、たくさんの場所で使われます。
コーキングがゴムになるまで
湿気で硬まるものが多いですが、乾燥によって硬化するもの、2液タイプ(硬まる成分と混ぜて硬化するもの、あえて硬化させないものと種類は様々です。外壁塗装で使われるのは、湿気硬化、乾燥硬化、2液タイプがよく使われます。
そもそもコーキングって何のために使うの?
コーキングは重要な役割が2つあります。
最近外壁によく使われる窯業系サイディングは、板状の形をしていて建物の外壁に貼り付けています。一枚の板を貼り付けるわけでは無く、現場で扱いやすいサイズに区切られた板を並べて貼り付ける事で外壁として使用されます。
この板と板の間に使うのがコーキングで、隙間から雨水が入り込むのを防ぐことができます。これにより、サイディングが貼り付けられた内側がカビたり腐食することを防止しています。もう一方で外壁の伸縮を吸収する役割もあります。
外壁は家の外側にあるため、外気温の影響を受け伸縮を行います。そこで、サイディング板の間にゴムが入ることで、その伸縮を吸収する役割があります。これが無いと、外壁の膨張に耐えきれず割れや欠けが発生してしまいます。
コーキングは外壁を長持ちさせるためには重要な役割を担っています。
よく使われる主なコーキングの種類と違い
コーキングは使う場所や用途によって使う材質が異なります。それぞれ特徴が異なりますので、1つずつ解説していきます。
シリコンタイプ
一番身近で馴染みのあるシーリングで、最近だと料理で使うゴムベラに使われているものと原料(シリコン樹脂)が一緒です。ゴムベラも熱したフライパンで使用しても溶け出したりしないですよね。
特徴は熱や紫外線に強く、水を弾くような性質を持っています。そのため、洗面所や風呂場の隙間を埋めることで使用されて価格も安価です。しかし、水を弾いてしまう特性が外壁塗装では邪魔をしてしまい、塗料も同様に弾いてしまうため、塗装との相性は悪いです。
よく使われる場所
キッチン、洗面所、風呂場などの水回り、塗装しない外装
変性シリコン
シリコンと変性シリコンは別物で、先ほどシリコンは塗料を弾いてしまい塗装との相性が悪いと紹介しました。そこで、シリコンに塗料を弾かなくしたものがこの変性シリコンです(原料はポリエーテル)
塗装前提で作られている事が多く、外壁塗装では比較的出番が多いコーキングですが、シリコンと比べると少しだけ高いです。しかし、塗装してしまうと変性シリコンに含まれている可塑剤という物質が塗膜に移動してしまい期間が経つとシミのようにコーキングの回りが汚れてしまうことがあります。これを可塑移行と呼びます。
よく使われる場所
サイディング、モルタル、屋根、ベランダ
ポリウレタン
ポリウレタンの特徴は紫外線による耐候性は悪いですが、変性シリコン同様に塗装が可能となっていて、かつ変性シリコンのように可塑剤が入っていないノンブリードタイプも発売されています。
最近だと、オート化学工業が発売している「オートンイクシード」はこのポリウレタン系に分けられます。しかし、硬化までの時間が長く、タックと呼ばれるベタつきが抜け切るまでに時間がかかってしまいます。
よく使われる場所
サイディング、屋根、モルタル、ALCなど塗装物
その他にも種類はありますが、外壁に使うコーキングで主流となっているのはこの3種類です。
ノンブリードタイプとは
シーリングには「ノンブリードタイプ」とか「NB」とか表記されることがあります。
ブリードとは、シーリングに含まれる可塑剤がシーリング表面に出てきてしまう現象で、コーキング表面にホコリや汚れがひっつきやすくなってしまいます。このブリードが塗膜と相性が悪く、塗膜を溶かし見た目が悪くなったり、ベタついて汚れやすくなってしまいます。
しかし、ノンブリードタイプは、こういった可塑剤などが表面に出ないように処理をされたコーキングで、塗装しても汚れが生じにくくしてあります。
可塑剤は、シーリングにゴムのような柔軟性を持たせることが役割です。サイディングに使うシーリングは柔らかい方が良いとされていますが、各メーカーは柔らかさを保ちつつブリードしない、ノンブリードタイプの開発に力を入れています。
続いては、外壁塗装でよく使われるコーキングの製品について深掘りしていきます。
サイディングでよく使われるコーキング
塗装店からよく提案される窯業系サイディングボードに使われるコーキングを製品の特徴を交えてご紹介していきます。先ほどもお伝えした通り、材料の種類で性能が分かれるというよりは、製品によって性能が異なるので注意してください。
ペンギンシール(サンスター技研)
ペンギンシールはサンスター技研が製造しているシーリングブランドで、日本工業規格認証で多くの施工実績があるシーリング業界で知らない人はいない大手メーカーです。
主要の施工実績としては、六本木ヒルズや羽田空港、名古屋ドームなど有名な施設で実績があります。
汚れに強い!MS2570typeNB(変性シリコン)
窯業系サイディングでは、MS2570typeNBが適合しており、目地への追従性や塗料の付着性、汚れにくいノンブリードタイプです。また、約390色ほど色を揃えており、外壁の塗料に合わせた色でシーリングを選ぶことか可能です。
塗料の付着性と表面の汚れにくさが売りの製品で、塗装しても塗装しなくても汚れに強いシーリングです。
肝心の期待耐用年数ですが、耐候性試験による結果がどこにも掲載されていませんでした。おそらく10年以上15年未満ぐらいだと思います。
2550UP
セメダイン
セメダインは強力接着剤として有名なメーカーで知っている方も多いと思います。一般的な接着剤の他に、建築用のシーリングも手掛けています。
セメダインが運営している接着基礎知識というページを公開していて、接着剤の基本から用語集などユーザーに寄り添ったサービスを展開しています。
POSシールサイディングⅡ超耐候S528(変性シリコン)
サイディングボードの収縮に追従することができて、かつ、サイディング用シーリングの苦手な「薄膜の白化」について対策したシーリングです。
こちらも高耐候とうたっておりますが、期待耐用年数について触れられておらず。5年から10年ぐらいと予想します。
SRシール(サンライズ)
SRシールはサンライズが展開するシーリングシリーズで、主に変性シリコンのシーリングを扱っています。30年と高耐候のシーリングを発売ており、JISの認定品の製品も発売しています。
コニシもコーキングを販売していますが、サンライズ製品を扱っていることもあり、協力会社として販売を行っています。
SRシール H100
H100は変性シリコンで塗装との相性が良く、塗装下地、露出どちらも対応可能なシーリングです。
最大の特徴は耐久性で10年毎の点検を行えば、30年と他のシーリングから群を抜いて耐久性が高いです。また、窯業系サイディングに向いていて、耐候性、接着耐久性、応用緩和性を兼ね備えています。
オートンイクシード(オート化学工業)
オート化学工業はウレタン系シーリングの技術力があり、防水や土木、建築にむけて、シーリングや接着剤を提供しているメーカーです。
中でもオートンイクシードはポリウレタン系シーリングですが、耐候性が高く30年とメーカーが公表しているロングライフシーリングを扱っています。
オートンイクシード
30年耐久には、太陽光や雨などの耐候性と長期にわたって亀裂を抑制する耐久性の2つが必要と考えており、どちらに対しても30年耐久と公表しています。また独自のLSポリマーを採用することで、可塑剤を使用せずノンブリードを実現し、ゴムの性能を長期にわたって発揮する仕組みを採用しています。
コーキングの気になる疑問
ここまでは、コーキングの基本的な情報を紹介してきましたが、続いてコーキングに関する疑問について解説していきます。
コーキングの耐久年数は?
今販売されている製品だと5年〜30年です。
最近は技術が進歩していて、昔のようにコーキングは材質によって耐久性が変わるというよりは、製品によって耐久性が変わってきます。紫外線に弱いポリウレタンでも30年もつものがあったり、変性シリコンでもブリードしないノンブリードタイプが発売されています。
製品ごとに耐久性は変わってくるので、塗装店から提案を受けた際には、メーカーに問い合わせする方が確実です。
コーキングの交換時期は?
コーキングは劣化したままの状態だと本来の性能が発揮されずに、雨漏りしたり隙間が空いてきたりします。そのため、適切な時期を迎えたら点検を行ったり交換する必要があります。
劣化の症状としては、
などが挙げられます。このような場合は古いコーキングの撤去と新しいコーキング充填が必要です。
コーキングの打ち替えと増し打ちの違いは?
コーキングは古いものを撤去し新しいコーキングを充填することを打ち替えと言います。古いコーキングは全て撤去するため、本来のゴムの性能を十分に発揮できることがポイントです。基本的には外壁塗装のタイミングで打ち替えを行うことで、外壁とコーキングのメンテナンスサイクルを合わせるようにします。
一方で、増し打ちは、既存のコーキングを上から補充するように足していく方法です。今あるコーキングの劣化が少ない場合や、既存コーキングの撤去が難しい場合は追加で補充する事で、隙間を防ぎます。撤去の手間が要らないので施工する方は工程が減り楽になります。
コーキングと塗装の順番
コーキングは塗装が先?塗装の後?
コーキングを先に打ち替えすることを先打ちと言い、塗装の後に打ち替えをすることを後打ちと言います。
外壁塗装する場合はコーキングを先に終わらせてコーキングの上に塗装するのか、外壁塗装を終わらせてからコーキングの打ち替えを行い塗装しないのか、どちらが良い方法なのか迷ってしまうと思います。
これも昔の話をすると、以前はコーキングの色は白や黒、グレーといった色のバリエーションが少なく、塗装しないとコーキング部分だけ色味が浮いてしまうことが多かったです。しかし、最近は外壁に合うような色のコーキングがたくさん発売されています。
先打ちは、コーキングを塗装すると、コーキングに含まれている物質が塗料に移り汚れてしまったり、コーキングの伸縮に塗料が負けてしまい割れたり浮いたりしてしまうデメリットが考えられます。
後打ちは、コーキングと塗料の相性による汚れや不具合の可能性は無くなりますが、外壁の色味と合うコーキングの色が無い事で完全に色味を合わせるのは難しい場合があります。
さらに、塗装店によっては、工程数が増えてしまったり、せっかく外壁を塗装してきれいな状態をコーキングによって汚してしまったりする可能性があるので、対応はしてもらえない場合があります。
この辺りを十分理解した上で、どちらの方法で施工するのか考えてみてください。
塗装店に確認すべきコーキングのこと
最後にコーキングの工事による塗装店とトラブルを防ぐために、確認すべきことをご紹介します。
使うコーキングの種類
コーキングが今の外壁に適した種類であるか確認するため、何ていう製品を使うのか確認しましょう。全く適さないコーキングや、塗料と相性が悪いコーキングも存在します。ここで間違ったコーキングを提案してくる塗装店は避けた方が良いかもしれません。
先打ちか、後打ちか
コーキングを先に打ち替えるのか、あとで打ち替えるのか確認です。先にコーキングを行う場合、塗装することがほとんどです(養生する場合の中にはあるかもしれません)そうなると塗料との相性が影響して、塗膜が割れたり、剥がれたりし、不具合の原因となる場合が考えられます。
希望するコーキングがあれば伝える
コーキングをご自身でメーカー調べて希望するコーキングがあれば、これを使いたいと相談することもできます。希望がある場合は先に伝えておくことで後々のトラブルを回避できます。
コーキングメーカーに確認すべきこと
メーカーによって、製品によって、施工方法が異なります。しかし、どの製品でも同じように施工する塗装店が多いです。そのため、この工事の進み方で間違いが無いか、確認する方法は、直接メーカーに問い合わせすることをおすすめします。
「この製品を提案されたが、この外壁と相性が悪く無いですか?」「このコーキングは塗装できますか?」と聞けば教えてくれます。また、カタログにはコーキング施工仕様書が掲載されているので、合わせて確認してみてください。
まとめ
外壁塗装では、様々な提案を受けますが、塗装店によって話していることがバラバラでどの情報を信じて良いのか迷ってしまいます。
しかし、コーキングでトラブルを防ぐためには、今回紹介したような情報を理解することが重要で、ご自身が最終的に塗装店を決める判断材料にもなります。
塗装店からの提案に問題がないのか、この工事で間違いないのか確認して失敗のない外壁塗装やリフォームを成功させてください。