「ウチの外壁、なんだか色が薄い気がする…」
「職人さんが水(またはシンナー)をジャブジャブ足しているけど、大丈夫?」
業界のタブーに触れますが、外壁塗装で最もバレにくく、かつ利益を出しやすい手抜き方法をご存知でしょうか?
それは、「塗料を規定以上に薄めて、材料費と手間を浮かせること」です。
どんなに最高級のフッ素塗料を使っても、水で倍に薄めれば、性能は100円ショップの雨合羽以下になります。
しかし、塗った直後は水分で濡れて綺麗に見えるため、施主様には絶対に見抜けません。
この記事では、元塗料メーカーの視点から「なぜ薄めすぎると塗料が死ぬのか」という科学的理由と、手抜き業者を論破するための「必要缶数の計算式」を伝授します。
1. メーカーの見解:「希釈率」は料理のレシピではない
まず、私たち塗料メーカーが定めている「希釈率(例:水で5〜10%薄めてください)」という数値。
これは、「お好みで調整してください」という料理のレシピのような目安ではありません。
「この範囲で薄めないと、塗料として化学反応しません」という、絶対的なデッドラインです。
メーカーが恐れる「造膜不良」とは?
塗料は、乾燥する過程で樹脂同士が結合し、強靭な「塗膜」を作ります。
しかし、規定以上に薄めすぎてしまうと、樹脂の密度がスカスカになり、結合が上手くいきません。
これを専門用語で「造膜不良(ぞうまくふりょう)」と呼びます。
【造膜不良が起きるとどうなる?】
- カタログで「15年持つ」と書いてあっても、3年でチョーキング(粉吹き)が始まる。
- 防水性が発揮されず、雨水が内部に浸透する。
- メーカー保証の対象外になる(施工不良扱い)。
つまり、薄めすぎた塗料を塗る行為は、「ただの色水を壁に塗って、乾かしているだけ」と同じことなのです。
2. なぜ業者は塗料を「薄め」たがるのか?
百害あって一利なしの「過剰希釈」ですが、悪質な業者が後を絶たない理由は2つあります。
① 材料費の削減
単純な算数です。本来は「5缶」必要な家を、水で倍に薄めて「2.5缶」で塗れば、浮いた2.5缶分の仕入れ値(数万円)がそのまま業者の利益になります。
② 作業スピードの向上(これが本音)
実は、材料費以上に大きいのがこれです。
適正な濃さの塗料は「ドロっと」しており、ローラーを動かすのに力が必要です。
しかし、シャビシャビに薄めると、驚くほどスイスイ塗れます。
職人の腕が疲れず、通常の半分の時間で作業が終わる。
「楽をして儲ける」ために、あなたの家の寿命が削られているのです。
3. 騙されないための自衛策:魔法の計算式
この手抜きを防ぐ唯一の方法は、「自分の家に何缶の塗料が必要か」を把握しておくことです。
メーカーのカタログには必ず「所要量(kg/㎡)」が書いてあります。これを使えば、誰でも計算できます。
【必要缶数の計算式】
塗装面積(㎡) × 塗布量(kg/㎡) ÷ 1缶の容量(kg) = 必要缶数
例:一般的な30坪の家(塗装面積150㎡)で「パーフェクトトップ」を塗る場合
- 塗装面積:150㎡
- 塗布量:0.26kg(2回塗り合計の標準値)
- 1缶の容量:15kg
150 × 0.26 ÷ 15 = 2.6缶
つまり、現場に最低でも「3缶」搬入されていなければ、規定量に足りていない(=薄めすぎている)ことになります。
4. 契約前に業者を牽制する「魔法の質問」
自分で計算するのが面倒な方も、契約前に業者にこう聞くだけで、手抜きを未然に防げます。
「メーカー規定の塗布量を守ってくれますか?
上塗りで何缶使う予定か、見積書に書いてください」
まともな業者なら「当然です。計算書もお出しします」と即答します。
逆に、「いやぁ、現場の状況によりますから…」「一式計算なので…」と言葉を濁す業者は、危険信号です。
その見積もり、塗料の「缶数」は書かれていますか?
もし見積書の項目が「塗装工事一式」となっていたら要注意です。
手抜きをされないためには、「使用する塗料の量(缶数)」を明確に提示できる業者を選ぶのが鉄則です。
一括見積もりサービスを使えば、地元の優良業者の中から、詳細な見積もりを出してくれる会社を比較できます。
「塗料の量は適正か?」というセカンドオピニオンとしても活用してください。
※ 匿名OK。業者への断り代行も可能です。
5. まとめ:塗料は「半製品」。完成させるのは職人です
塗料は、缶に入っている状態では「半製品」です。
現場で適切な希釈率で混ぜ合わせ、適切な厚みで塗って初めて「製品(塗膜)」になります。
どんなに良い塗料を選んでも、薄められてしまえば意味がありません。
あなたの家を「手抜き実験」の場にされないよう、信頼できる業者選びにこだわってください。