外壁塗装を考える時に、塗装屋さんから塗料の提案を受けるはずです。その時に「この塗料は溶剤で〇〇で」とか、「この塗料は水性なので〇〇で〇〇ですね〜。」と言われることがあります。
この溶剤塗料と水性塗料は、塗料の特徴に違いがあって、外壁塗装を検討する上で違いを理解しておく必要があります。
そこで今回は、塗装で重要な溶剤塗料と水性塗料の違いについて詳しくご紹介します。
溶剤塗料と水性塗料の1番の違いは臭い!
溶剤塗料の1番の特徴は、臭いです。皆さんもペンキ臭いとか、ペンキ独特の臭いが想像できると思います。あのペンキの臭いは溶剤塗料独特の臭いで、水性塗料ですと、あのペンキの臭いがしません。
いわゆるこのペンキの臭いがすると、お隣さんから「臭い」と嫌味を言われないか気にする方も多いはずです。
それじゃあ、水性塗料をなぜ使わないの?と疑問に思う方も多いはずです。それは、溶剤塗料の特徴を知れば理由がよくわかるはずです。
溶剤塗料の特徴
まずは、溶剤塗料の特徴を6つ紹介します。
1.気温による影響を受けにくい。
水性塗料ですと、一般的な水が0度を下回ると凍ってしまうのと同じように、水性塗料も0度以下になると凍結してしまう事があります。
溶剤塗料の場合、石油と同じく、凍結温度温度が-20度前後とされていますので、凍ってしまい塗装ができないということはありません。(そもそも、気温が5度以下の場合は塗装に不向きな環境です。こちらはまた別の記事でご紹介します。)
2.伸びやすく塗りやすい、更に仕上がりがキレイ。
溶剤塗料は油性塗料と言われることもあって、油を使って製造されています。
例えば、手のひらに油と水を垂らしてみると、油のほうがベタつき、手のひら全体によく伸びるはずです。塗料にした場合もイメージは一緒で、浸透性が高く外壁に密着する力は高いです。
また、浸透性が高くよく伸びるので、塗装のスキルによる仕上がりのムラが少ないため、塗装職人を選ばないことも特徴です。
3.水性塗料より耐久性があると思う職人が多い。
溶剤塗料と水性塗料の歴史を考えると、溶剤塗料の方が歴史が長く、市場に出ている製品も多いです。各塗料メーカーも溶剤の方がコストも掛からず新製品を作りやすいということもあります。
4.臭いが強い
溶剤塗料は、石油等を使い製造されているため、独特の臭いがします。いわゆるペンキの臭いは誰でも想像できると思います。外壁塗装で考えると、このペンキの臭いがご近所のお宅でもしてしまうため、小さいお子さんが居るお家だとご近所トラブルになってしまう可能性も考えられますよね。
5.燃えやすい。
溶剤塗料は第二類石油に該当されます。引火点が21度以上70度未満ですので、よく燃えてしまう塗料です。
最近では、難燃性と言われる、燃えにくいカーテンや、外壁材が選ばれる中、燃えやすい塗料を外壁に塗ることは抵抗を感じてしまいます。
6.外壁材を痛めてしまうことがある
溶剤の浸透力の高さから劣化の進んだ外壁材に使用してしまうと溶かしてしまったり、傷めてしまうことがあります。外壁の状態によっては使用を控える必要があります。
溶剤塗料のことを一昔前の人は『油性塗料』と読んだり、『非水』『NAD型』と読んだります。
水性塗料の特徴
続いて水性塗料の特徴を5つ紹介します。
1.溶剤のような臭いがほとんど無い
水性塗料は、溶剤ほどシンナーの臭いがすることはないため、ご近所にも臭いで気を使うことは有りません。健康上の影響も水性塗料の方が少ないです。
2.燃えにくい
水性塗料は水を使って製造されていますので、溶剤塗料に比べると燃えにくい特徴があります。燃えやすい木造住宅が一般的な日本では燃えにくい塗料を使うことは重要です。
3.劣化が早いと思う職人が多い
水性塗料は、溶剤塗料と比べると歴史が浅く、耐久性を考えると劣化が早い、密着力が悪いと考えている塗装職人が多いです。しかし、2021年現在、メルセデスベンツでも水性塗料に切り替えています。
新車整備を水性塗料
水性塗料は日々進化をしていて、密着しない、劣化が早いということは、一昔前の話という時代になりました。
4.気温による影響を受けやすい
溶剤塗料の特徴でも紹介したように水性塗料は0度を下回ると凍ってしまう可能性が高いため、作業性が悪いと考え塗装職人が嫌がることがあります。
5.溶剤ほど伸びにくく、浸透しにくいため、仕上がりにムラが生じることがある
やはり、塗料の伸びやすさや塗りやすさを考えると溶剤の方が優秀です。しかし、水性塗料も塗料として作られているので全く伸びないという訳ではありません。
塗装職人は溶剤塗料を塗りたい
要するに、職人からすると溶剤のほうが、作業性が高かったり、仕上がりが良かったりするので、溶剤塗料を好む傾向にあります。また、溶剤塗料の方が歴史が長いので、各メーカーが製造している種類も溶剤の方が多いというわけですね。
溶剤塗料と水性塗料 今は水性塗料の時代!
もし私が「溶剤塗料と水性塗料どっちを選ぶ?」と聞かれた場合、正直に答えると水性塗料を選びます。
理由はいくつかあって、外壁塗装を考えるとやっぱり一番気にするのは、ご近所の目というか、近隣に迷惑を掛けたくないという思いがあります。
一生暮らしていく家なので、外壁塗装がキッカケで揉めるような事は少しでも避けたいというのが心情ですね。
もちろん、塗装期間中の臭いが少ないのも嬉しいです。溶剤塗料を使って外壁塗装すると工事期間中は本当にペンキ臭くて、慣れるまでは気持ち悪くなるほどです。
更に、塗料メーカーも水性塗料に力を入れています。やっぱり臭いが強いことや、VOC(揮発性有機化合物)という環境汚染に繋がる物質の排出を減らすことを考えているのでしょう。今の時代、企業は環境問題を避けては通れません。
一昔前の時代なら溶剤塗料を選ぶしか無かったですが、今の時代なら水性塗料を進んで選びます。
ちなみに、造船などで使われる重防食塗料は、まだまだ溶剤がメインで、水性塗料は未だ採用が難しいところがあります。特に海水による塩害が考えられる箇所への塗装は溶剤塗料が主流です。
更に、大手塗料メーカーの日本ペイントは、溶剤と水性で呼び方を付けており、『ファイン』が製品名に付きます。
例)日本ペイントの場合『ファイン』が付く
パーフェクトトップ(水性)ファインパーフェクトトップ(溶剤)
関西ペイントの場合『マイルド』が付く
アレスダイナミックTOP(水性)アレスダイナミックトップマイルド(溶剤)
水性塗料と溶剤塗料は自分が好きな方を選んでOK
溶剤塗料の良さがあり、水性塗料の良さがあり、それぞれにデメリットがあって、製造方法も異なります。
外壁塗装を考えている方は、それぞれの違いを理解した上で、自分に合った塗料を選んで問題ありません。溶剤と水性の違いを理解していないと、業者の都合で塗料を決められてしまい、思い描いた外壁塗装とは違う工事になってしまいます。ご自身が納得した工事を施工してもらうためにも、塗料の知識は知っておいた方が良いと思います。
次回は塗料の1液と2液の違いについてご紹介します。